KDPでパブリックドメイン作品を出版する方法とは?条件と差別化要件
のべ600名以上・累計10,000冊以上の出版を支援してきた石黒秀樹が解説します。
著作権が切れた古典作品なら、そのままKDPで販売できると考えるかもしれません。
しかし、著作権が切れていることと、その版をKDPで販売できることは別の条件です。
KDPはパブリックドメイン作品の出版を認めていますが、すでに入手できる作品は取り扱いを拒否される場合があります。Amazonストアに無料版があるときは、オリジナル翻訳・注釈・図版といった独自性が必要です。
さらに、ロイヤリティやKDPセレクトの扱いも通常のオリジナル作品とは異なります。出版前に確認すべき条件と、差別化の具体的な方法を順番に整理します。
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KDPでパブリックドメイン作品は出版できるが著作権切れだけでは不十分
目次
KDPでは、パブリックドメインになった作品を出版できます。
ただし、著作権上自由に利用できる作品なら、どのような形でも販売できるわけではありません。
著作権の確認とKDPの販売条件は分けて判断する
パブリックドメインとは、著作権による保護が終了するなどして、著作物を利用できる状態になったものを指します。
ただし、法律上利用できることと、Amazonがその出版物をKDPで受け付けることは同じではありません。
最初に原作品や翻訳などの権利状態を確認し、その次にKDPのパブリックドメイン作品に関する条件を確認すると、判断しやすくなります。
KDPへ登録するときは、出版権の設定でパブリックドメイン作品であることを申告します。あわせて、Amazonから作品がパブリックドメインであることの証明を求められる場合もあります。
現在の条件は、KDP公式のパブリックドメインコンテンツに関する案内で確認できます。
すでに入手できる作品は取り扱いを拒否される場合がある
パブリックドメイン作品でも、既存の文章を電子書籍化すれば必ず販売できるとは限りません。
KDP公式は、Amazonまたは他のサイトですでに入手できるパブリックドメインコンテンツについて、取り扱いを拒否する場合があると案内しています。
有名な作品の本文をほぼそのまま登録する方法は、この点で安全とはいえません。Amazon上に同じ作品があるかどうかだけでなく、他の場所で入手できるかどうかも関係します。
一方で、「この状態なら必ず受理される」という個別の基準までは公開されていません。無料版が見当たらないことだけを根拠に、未加工の作品が出版できると判断しないようにしましょう。
Amazonストアに無料版がある場合は独自性のある版が必要になる
条件がより明確なのは、同じ作品の無料版がAmazonストアに存在する場合です。
このときKDPでは、独自性のある版でなければ出版できません。示されているのは次の3種類です。
- オリジナル翻訳を加えた版
- オリジナルの注釈を加えた版
- 関連するオリジナル図版を10点以上加えた版
表紙を差し替えたり、文字組みを整えたりすることとは意味が異なります。読者にとって意味のある独自要素を作品へ追加できているかが判断の中心になります。
出版前に原作品と翻訳・挿絵の権利をそれぞれ確認する
パブリックドメイン作品を扱うときは、原著の著作権だけを見れば足りるとは限りません。
原作品、翻訳文、注釈、挿絵は、それぞれ権利状態が異なる可能性があります。
特に外国の古典では、原著が保護期間を過ぎていても、日本語訳は保護されている場合があります。
日本では著作権の保護期間は原則として著作者の死後70年
日本では、実名で公表された一般的な著作物の著作権は、原則として著作者の死後70年間保護されます。
期間は、著作者が亡くなった年の翌年1月1日から計算します。
ただし、すべての著作物をこの計算だけで判断できるわけではありません。無名・変名の著作物、団体名義の著作物、映画などには、異なる基準が適用される場合があります。
共同著作物や外国の作品も条件によって判断が変わるため、著者名と没年だけで機械的に決めないようにしてください。
保護期間の考え方は、著作権情報センターの著作権保護期間に関する案内で確認できます。
原著がパブリックドメインでも既存の翻訳文まで自由とは限らない
外国の古典を日本語で出版するときは、原著と翻訳文を分けて確認します。
原著の著作権が切れていても、別の人が作成した翻訳文まで自動的にパブリックドメインになるわけではありません。
翻訳には翻訳者による創作的な表現が含まれるため、原作品とは別に著作権で保護される場合があるからです。
古い海外小説の原文が自由に使えても、現在流通している日本語訳をそのまま使えるとは限りません。挿絵や解説を既存の書籍から利用する場合も同じで、素材ごとに権利を確かめます。
「原作が自由に使える」ことと「手元にある本を丸ごと使える」ことは、切り分けて考えてください。
販売する国によって著作権の保護期間が異なる場合がある
KDPでは複数の地域で電子書籍を販売できるため、販売地域の設定にも注意します。
著作権の保護期間や権利状態は、国や地域によって異なる場合があります。
日本でパブリックドメインと判断できることだけを根拠に、すべての販売地域で同じ扱いになるとは考えないでください。KDPでも、出版に必要な権利を持っている地域を正しく設定することが求められます。
権利状態がはっきりしない地域がある場合は、利用できる権利の範囲を確認したうえで販売地域を決めます。
日本語のパブリックドメイン作品として青空文庫を利用する場合は、青空文庫の作品をKindle出版するときの著作権とKDP規約で固有の注意点を確認できます。
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KDPが差別化として認めるのは翻訳・注釈・10点以上のオリジナル図版
パブリックドメイン作品へ何かを追加すれば、すべて差別化として認められるわけではありません。
KDP公式が独自性として示しているのは、次の3種類です。
| 差別化方法 | KDPで示されている内容 |
|---|---|
| オリジナル翻訳版 | 出版者自身による新しい翻訳を加える |
| オリジナル注釈付き版 | 学習ガイド、文芸批評、詳細な略歴、歴史的背景などを加える |
| 図解版 | 作品に関連するオリジナル図版を10点以上加える |
いずれもファイルを加工するのではなく、作品へ独自の内容を追加する点が共通しています。
自分で新しく翻訳したオリジナル翻訳版
外国語のパブリックドメイン作品なら、自分で新しく翻訳した版を作る方法があります。
重要なのは、既存の日本語訳を流用したものではなく、新しい翻訳であることです。
原著が自由に利用できても、既存の翻訳には別の著作権が存在する可能性があるためです。
なお、翻訳版として出版する場合は、タイトルや著者等の情報にもKDPが指定する表示が必要になります。
学習ガイドや批評などを加えたオリジナル注釈付き版
原文を収録したうえで、独自の解説や注釈を加える方法も認められています。
KDP公式では、学習ガイド、文芸批評、詳細な略歴、歴史的背景などが例として挙げられています。原作品の理解や解釈を助ける独自コンテンツを追加する方法です。
一方で、何文字書けばよい、何ページ追加すればよいといった最低基準は明記されていません。形式的に短い文章を付けるだけで足りるとは判断しにくいところです。
注釈付き版として読者に説明できる内容になっているかを基準に考えると安全です。
作品に関連するオリジナル図版を10点以上加えた図解版
文章ではなく、図版を追加して差別化する方法もあります。
KDPは、作品に関連するオリジナル図版を10点以上含む版を、差別化された図解版として示しています。数の条件が明記されている点が、注釈付き版との違いです。
ただし、画像を10点並べればよいという意味ではありません。作品に関連したオリジナルの図版であることが条件です。
他人が制作した挿絵を使う場合は、その画像自体の著作権や利用条件も別に確認します。
目次追加・書式変更・作品集化・価格変更だけでは差別化にならない
見た目を変えただけでは、独自性としては認められません。
KDP公式は、リンク付き目次の追加、書式の改善、作品のコレクション化などを差別化要件として認めないと案内しています。ランキングや価格の違いも根拠にはなりません。
インターネット上で自由に入手できるコンテンツを追加しただけの場合も同様です。
次のような変更だけで条件を満たしたとは考えないでください。
- 表紙だけを新しくする
- 目次を追加して読みやすくする
- 文字サイズやレイアウトを整える
- 複数のパブリックドメイン作品を1冊にまとめる
- 既存版より安い価格を設定する
これらは本の使いやすさを高めることはあっても、KDPが示す差別化とは別の話です。加工したかどうかではなく、翻訳・注釈・図版という独自内容を加えたかどうかで判断します。
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差別化版はタイトル・商品説明・著者情報にも正しく表示する
独自要素を本文へ加えただけでは、手続きは完了しません。
どのような差別化を行った版なのかを、タイトル・商品説明・著者等の情報にも反映する必要があります。
本の中身と、KDPへ登録する情報を一致させておきましょう。
タイトルに「翻訳版」「注釈付き」「図解版」を明示する
差別化版として出版する場合は、タイトルにも版の種類を表示します。
オリジナル翻訳なら「(翻訳版)」、注釈なら「(注釈付き)」、図版なら「(図解版)」と示します。
独自内容を加えていても、タイトルから違いが分からない状態は避けます。実際に追加した内容と合う表示を選び、中身と異なる表示は付けないでください。
商品説明の冒頭で追加した独自内容を示す
差別化した内容は、タイトルだけでなく商品説明にも記載します。
KDPでは、商品説明の冒頭で、その版に追加した独自内容を箇条書き形式で示すよう案内しています。
翻訳版なら新しい翻訳であること、注釈付き版なら追加した解説の中身が分かるようにします。図解版であれば、作品に関連するオリジナル図版を加えた版だと読み取れる書き方にします。
KDP日本語版の案内では、独自性を説明する記載について最大80文字という条件も示されています。
本文・タイトル・商品説明で、差別化内容が食い違わないようにしましょう。
翻訳版では原著者と翻訳者を著者等フィールドへ登録する
オリジナル翻訳版を出版する場合は、著者情報の登録方法にも注意します。
著者等フィールドには、原作品の著者と翻訳者の両方を登録します。自分で新しく翻訳した場合は、翻訳者として自分の情報を登録します。
新規翻訳ではなく、パブリックドメインの翻訳を使う場合で、翻訳者が分からないこともあります。その場合についてKDPは、翻訳者を「匿名」と記載するよう案内しています。
原著者だけを登録して終わらせず、実際に使用している翻訳の状態に合わせて設定してください。
出版権の設定ではパブリックドメイン作品として申告する
KDPへ本を登録するときは、出版に必要な権利についても回答します。
パブリックドメイン作品として出版する本では、「これはパブリックドメインの作品です」に該当する設定を選択します。
差別化のために翻訳や注釈を加えても、元作品の権利状態が変わるわけではありません。出版する内容と権利設定は一致させておきます。
ロイヤリティは原則35%でKDPセレクトの対象外になる
パブリックドメイン作品では、出版できるかどうかだけでなく、収益化の条件も通常のオリジナル作品とは異なります。
電子書籍のロイヤリティは原則として35%になる
パブリックドメイン作品、または内容の大部分がパブリックドメインで構成される電子書籍について、KDPは原則として35%ロイヤリティのみとしています。
通常のオリジナル作品と同じ感覚で、70%を前提に収益を見積もらないようにします。
まずは、自分の本がKDP上でパブリックドメイン作品として扱われるかどうかを切り分けて考えてください。
大幅な独自コンテンツや独自翻訳では70%を選べる場合がある
原作品がパブリックドメインでも、すべてが35%に固定されるとは限りません。
KDPでは、大幅なオリジナルコンテンツを追加した作品や独自翻訳によって、パブリックドメイン作品と見なされなくなった場合について例外を示しています。その場合は70%を適用できる可能性があります。
ただし、本文の何%を追加すればよいといった具体的な割合は明記されていません。独自コンテンツを少し加えれば自動的に70%になるとは判断しないようにしましょう。
パブリックドメインのコンテンツはKDPセレクトに登録できない
KDPセレクトでは、主要コンテンツについて独占的な出版権を持っていることが前提になります。
誰でも利用できるパブリックドメイン部分について、出版者が独占的な権利を持つことはできません。そのため、パブリックドメインのコンテンツはKDPセレクトの対象外です。
パブリックドメイン作品を出版するときは、KDPセレクトへの登録を前提に企画を組み立てないようにします。
出版までは「権利確認→差別化→登録情報→規約確認」の順で進める
原稿を先に作り始めるより、確認する順番を決めておくほうが漏れを減らせます。
| 順番 | 確認すること |
|---|---|
| 1 | 原作品・翻訳・画像などの権利状態を確認する |
| 2 | 翻訳・注釈・10点以上のオリジナル図版から差別化方法を決める |
| 3 | タイトル・商品説明・著者情報・権利設定へ正しく反映する |
| 4 | パブリックドメイン以外のKDPコンテンツ規約も確認する |
権利確認を後回しにすると、原稿の完成後に翻訳文や挿絵を差し替える必要が出る場合があります。使用する素材の権利は、書き始める前に確かめておきましょう。
また、パブリックドメインであることは、著作権に関する条件を一つ満たしたにすぎません。著作権が切れている作品でも、KDPの一般的なコンテンツガイドラインは別に適用されます。
KDP全般で確認すべき内容は、Kindle出版の禁止事項とKDPガイドラインで確認できます。
権利状態とAmazon独自の出版条件を分けて確認してから登録すれば、出版後の差し替えや取り扱い拒否を避けやすくなります。
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