Kindle出版で体験談・実話系の本を出す方法とは?書き方とプライバシー
のべ600名以上・累計10,000冊以上の出版を支援してきた石黒秀樹が解説します。
自分の経験をKindle本にしたいと思っても、どこからどこまで書けば一冊になるのか迷いやすいものです。
体験談・実話系の本で最初に決めるのは、誰に役立つ、どの体験を一冊で伝えるのかという範囲です。人生をすべて記録する必要はありません。
そのうえで、出来事を並べるだけでなく、そのとき何を考え、どう判断し、何が変わったのかまで書くと、読者が意味を受け取れる本になります。もう一つ欠かせないのが、自分以外の登場人物に関する情報の扱いです。
この記事では、体験の絞り込み方、エピソードの選び方と章構成、第三者のプライバシーや権利の確認方法までを順番に説明します。
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体験談・実話系の本は「誰に役立つどの体験か」を絞って作る
目次
体験談を本にするときは、まず一冊で伝える体験の範囲を決めるところから始めます。
自分にとって大切な出来事をすべて入れるより、読者が知りたいテーマに関係する体験へ絞った方が、本の目的がはっきりします。
人生全体ではなく一つの経験やテーマに焦点を当てる
体験談というと、生まれてから現在までを順番に書く自分史を想像する人もいます。しかし、Kindle本にする体験は人生全体である必要はありません。
一つの失敗、一つの転機、ある期間に抱えた悩みなど、特定の経験だけを切り出して一冊にする方法もあります。
テーマ候補は、次のような視点で探すと見つけやすくなります。
- 自分の考え方が大きく変わった経験
- 失敗から立て直した経験
- 長く悩んだ末に答えを見つけた経験
- 誰かに同じ失敗をしてほしくない経験
- 経験する前には知らなかったことを学んだ出来事
判断の基準を、体験の珍しさだけに置かないようにします。ありふれた経験でも、同じ状況にいる読者の役に立つ情報が含まれていれば、一冊のテーマになり得ます。
経験の前後で何が変わったかを整理して読者と結び付ける
テーマ候補が見つかったら、その経験によって何が変わったのかを書き出します。出来事そのものよりも、経験の前後で生まれた変化が本の中心になることが多いためです。
変化には、たとえば次のようなものがあります。
- 考え方が変わった
- 行動の仕方が変わった
- 失敗する原因に気づいた
- 人間関係の見方が変わった
- 以前とは違う判断ができるようになった
次に、その変化を知りたい人が誰なのかを考えます。昔の自分と同じ状況にいる人を想像すると、読者像を具体化しやすくなります。
たとえば、仕事を辞めた経験というだけではテーマが広すぎます。辞めるか迷っていた時期に何を考え、何を基準に決断したのかまで絞ると、読者が知りたい内容が見えてきます。
出来事の記録で終わらせず読者が持ち帰れる内容にする
体験談が日記のようになる原因の一つは、出来事だけを時間順に並べてしまうことです。何が起きたかに加えて、そこから何が分かったかまで書くと、読者にとっての価値が生まれます。
一つの出来事を書くときは、次の要素がそろっているか確認します。
- そのとき、どのような状況だったか
- 何が起きたのか
- 自分は何を考えたのか
- なぜその行動を選んだのか
- 結果として何が変わったのか
- 今振り返ると何が分かるのか
出来事、判断、変化、学びまで書くと、個人的な経験が読者にも意味のある内容へ変わります。
体験を書き出して本に入れるエピソードだけを選ぶ
テーマが決まったら、いきなり本文を書き始めずに、関連する出来事を一度まとめて書き出します。そのうえで、テーマを伝えるために必要なエピソードだけを選ぶと、構成がまとまります。
転機・失敗・判断・結果につながる場面を書き出す
最初からきれいな順番に並べる必要はありません。思い出せる出来事を、短いメモとして書き出していきます。
特に優先して拾いたいのは、物語や考え方が動いた場面です。
- 問題が始まった出来事
- 大きく失敗した出来事
- 迷いや葛藤が生まれた場面
- 重要な決断をした場面
- 考え方が変わったきっかけ
- 状況が好転または悪化した出来事
- 最終的な結果につながった行動
こうした場面には、読者が「なぜそうしたのか」と知りたくなる要素が含まれています。判断が変わった瞬間や転機が、体験談の流れを作る材料になります。
読者の理解に必要かどうかで採用を決める
出来事を書き出すと、本に入れたい話がどんどん増えていきます。ただし、思い入れがある出来事と、読者に必要な出来事は一致するとは限りません。
採用するか迷ったときは、そのエピソードが次のどれかに当てはまるか確認します。
- 読者の疑問に答える
- 後の判断につながる
- 変化の理由を説明する
- 失敗や成功の原因を理解する材料になる
- 本の結論に納得するために必要になる
どれにも当てはまらないエピソードは、削っても本筋に影響しない可能性があります。自分が書きたいかではなく、読者が理解するために必要かで判断します。
本筋から外れる出来事は思い切って削る
体験談では、これも実際にあったことだから入れたい、と感じる場面が多くなります。すべて事実であっても、一冊の目的と関係がなければ、読者には脱線として映ります。
中心テーマが仕事上の失敗であれば、同時期に起きた私生活の出来事をすべて説明する必要はありません。その出来事が判断や結果に影響した場合だけ、必要な範囲で入れれば十分です。
削ることは、体験を否定することではありません。一冊の中で何を伝え、何を伝えないかを決める編集作業だと考えると、整理しやすくなります。
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章構成は状況・出来事・判断・変化・学びの流れで組み立てる
必要なエピソードを選んだら、読者が変化の流れを追える順番に並べます。基本の型は、状況から出来事が起こり、判断や行動を経て変化し、最後に学びへつながる流れです。
| 段階 | 書く内容 |
|---|---|
| 状況 | 当時どのような状態だったのか |
| 出来事 | 何が起きて問題や変化が生まれたのか |
| 判断・行動 | 何を考え、なぜその行動を選んだのか |
| 変化・結果 | 行動した結果、何が変わったのか |
| 学び | 今振り返って何が分かったのか |
すべての章をこの形へ機械的に当てはめる必要はありません。ただし、出来事の意味がうまく伝わらないと感じたときに、どの段階が抜けているのかを確認する目安になります。
時系列とテーマ別のどちらで並べるかを決める
体験談の構成は、大きく分けて時系列で進める方法と、テーマごとに整理する方法があります。
一つの出来事が時間とともに変化していく本なら、時系列が向いています。始まりから問題、転機、結果という流れを読者が追いやすいためです。
複数の経験から共通する学びを伝える本では、テーマ別の方が整理しやすくなります。たとえば、失敗した判断、助けになった行動、後から気づいたこと、というように分ける方法です。
時間の変化を読ませたいなら時系列、複数の経験から学びを整理したいならテーマ別を基本に考えると選びやすくなります。
当時の感情や判断の理由まで書く
同じ出来事でも、何が起きたかだけでは、その体験の意味が十分に伝わりません。読者が知りたいのは、その場面で著者が何を考え、なぜその行動を選んだのかという部分です。
会社を辞めたとだけ書くより、その前に何を迷い、何を恐れ、最後に何を判断基準にしたのかまで書くと、流れが理解できます。
ただし、感情を長く説明すればよいわけではありません。後の判断や変化につながる感情を中心に書くと、本筋から外れにくくなります。
事実を脚色せず背景と変化を掘り下げる
実話だからといって、出来事を派手に見せなければ面白くならないわけではありません。読み応えは、出来事を大きくするのではなく、その背景や判断の過程を具体的にすることで生まれます。
突然すべてが変わったと強調するより、変化の前にどのような状況があり、何をきっかけに判断が変わったのかを書く方が、読者は納得しやすくなります。
また、時間が経った出来事ほど、当時の感情と客観的な出来事が混ざりがちです。何が起きたのかと、自分がどう感じたのかを分けて書くと、文章も整理されます。
実話として出版する以上、事実そのものを創作するのではなく、実際の背景や変化を掘り下げることが基本です。KDPでも、本の内容を正確に表さず読者を誤解させる記述は避ける必要があります。詳しくはKDPのコンテンツガイドラインを確認してください。
構成が固まった後のWord設定や目次、入稿用原稿の作り方については、Kindle出版の原稿の書き方と作成手順で確認できます。
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第三者のプライバシーは実名を仮名に変えるだけでは守れない
体験談や実話には、自分以外の人物が登場します。このとき大切なのは、名前を変えれば十分だと考えないことです。
KDPでは、出版するコンテンツについて、プライバシーやパブリシティ権を含む他者の権利を侵害していないことが求められます。一方で、仮名にすれば安全といった具体的な基準が示されているわけではありません。
原稿の情報を3種類に分けると確認しやすい
原稿のすべての文章を、同じ基準で確認する必要はありません。自分の体験、第三者についての事実、第三者が作った表現の3種類に分けると、確認すべき点が整理できます。
| 情報の種類 | 主に確認すること |
|---|---|
| 自分が経験した出来事 | 事実関係や実話としての正確性 |
| 第三者についての事実 | プライバシーや人物の特定可能性 |
| 第三者が作った文章・写真など | 著作権など利用に必要な権利 |
この3つを混同すると、自分が体験したことだから自由に書けるという判断になりやすくなります。自分の経験を語る部分と、他人について事実を公表する部分は、分けて考えます。
勤務先・地域・時期・関係性の組み合わせで特定されないか確認する
人物を特定する手掛かりは、氏名だけではありません。勤務先、居住地域、出来事が起きた時期、著者との関係などを組み合わせることで、人物を推測できる場合があります。
実名をAさんに変えていても、職場や役職、地域、出来事の内容が具体的であれば、周囲の人には誰のことか分かる可能性があります。
第三者が登場する部分では、次の情報をまとめて見直します。
- 氏名やニックネーム
- 会社・学校・団体などの所属先
- 居住地域や活動地域
- 出来事が起きた時期
- 年齢や立場
- 著者との家族・職場・友人などの関係
確認する視点は、一つひとつの情報ではなく、組み合わせたときに人物を推測できないかです。
なお、自分自身をペンネームで出版することと、本に登場する第三者を保護することは別の問題です。著者自身の匿名出版については、Kindle出版で本名を公開せずペンネームで出版する方法で確認できます。
本筋に不要な私生活やセンシティブな情報は削除・抽象化する
実際に起きたことでも、本のテーマに必要な情報とは限りません。第三者の私生活に関わる内容は、その情報がなければ体験の意味を伝えられないのかという基準で確認します。
病歴、家庭事情、犯罪や不正に関する内容などは、人物に大きな影響を与える情報です。第三者について断定的な評価や重大な事実を書く場面は、特に慎重に見直します。個別の記述が法的に問題になるかどうかは、内容によって変わります。
本筋に不要であれば削除し、必要な場合でも人物を特定する情報を減らす、具体性を下げるといった方法を検討します。実話だからすべてを細かく書くのではなく、本の目的に必要な事実だけを残すという考え方です。
他人の文章・DM・SNS投稿・写真は権利を別に確認する
第三者とのやり取りが体験の中心になっている場合、DMやメールをそのまま載せたくなることがあります。しかし、自分が受け取った文章であっても、その文章を自分が作ったことにはなりません。
SNS投稿、メール、DM、写真などを載せるときは、体験の事実とは切り離して権利を確認します。KDPでは、アップロードするコンテンツについて必要な権利を保有していることが求められます。
自分が持っているデータと、出版物に掲載する権利があるものは同じとは限りません。他人の文章を引用する場合の考え方は、Kindle出版の引用ルールと著作権の注意点で確認できます。
判断が難しい内容は許諾や専門家への確認も検討する
第三者の重要な私生活上の情報を載せる場合、自分だけで安全性を判断するのは難しくなります。本人から許諾を得る、内容によっては法律の専門家へ相談するといった方法があります。
ただし、本人の許諾を得たからといって、すべての権利上の問題が解消されるとは限りません。文章や写真など別の権利が関係している場合は、それぞれ確認が必要です。
KDPが個別の権利問題について法律判断を行うわけでもありません。判断が難しい内容ほど、出版する側が確認の範囲を広げるのが安全側の対応になります。
出版前に実話本専用のチェックを行って原稿を完成させる
本文を書き終えたら、誤字脱字の確認とは別に、実話本として内容を見直します。第三者の特定情報と権利に関わる部分を重点的に再確認します。
タイトルに第三者を特定できる情報を入れない
本文で匿名化していても、タイトルやサブタイトルに具体的な情報を入れると、そこから第三者の特定につながることがあります。
特定の会社名、地域、立場、出来事などをタイトルに使う場合は、その情報が本当に必要なのかを確認します。体験談のタイトルで優先したいのは第三者の固有情報ではなく、誰のどのような悩みに役立つ体験なのかが伝わることです。
タイトル全体の作り方については、Kindle出版で売れるタイトルの作り方で確認できます。
実名・固有情報・引用・写真を項目ごとに見直す
出版前は、通して読むだけではなく、確認項目を決めて原稿を見直します。
- 第三者の実名やニックネームが残っていないか
- 勤務先・地域・時期などを組み合わせて人物を特定できないか
- 本筋に不要な私生活上の情報が含まれていないか
- 他人の文章やSNS投稿をそのまま使用していないか
- 掲載する写真や画像について必要な権利を確認したか
一度にすべてを見るより、項目ごとに原稿を通した方が見落としを減らせます。KDPでは、著作権だけでなくプライバシーやパブリシティ権を含めて、他者の権利を侵害していないことが求められます。出版前にKDPのコンテンツガイドラインにも目を通しておくと安心です。
気になる箇所は削除か抽象化を選んで仕上げる
確認中に気になる箇所が見つかったとき、そのまま残すか削除するかの二択ではありません。本筋に必要な情報なら、特定につながる要素を減らして書き直す方法もあります。
具体的な地名や時期を、本筋に必要な範囲まで広い表現に変える。人物を特定するためだけに書いていた情報を省く。こうした調整で残せる場合もあります。
ただし、どこまで変えれば法的に問題がなくなるという一律の基準はありません。匿名化したから安全と決めつけず、内容そのものを見直すという姿勢が必要です。
体験談・実話系のKindle本は、自分の経験だからこそ書ける内容が強みになります。読者に必要な体験を選び、第三者に関わる情報と権利を確認したうえで、出版用の原稿へ仕上げていきましょう。
【著者:石黒秀樹】
Kindle出版サポート歴5年。
累計受講生600名以上。
受講生の累計出版数10,000冊以上。(2026年時点)
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