Kindle広告のACOSとは?黒字ラインの計算方法を徹底解説
のべ600名以上・累計10,000冊以上の出版を支援してきた石黒秀樹が解説します。
Kindle広告を運用していると、ACOSが何%なら黒字なのか迷う場面があります。
先に結論を書くと、すべてのKindle本に共通する黒字ラインはありません。
判断の基準になるのは、広告経由で売れたときに自分の本から実際に残るロイヤリティです。35%ロイヤリティなら原則35%、70%ロイヤリティなら配信コストの条件によって70%前後が、購入売上だけで見た黒字ラインになります。
ACOSの意味と計算式、ロイヤリティ別の損益分岐ACOS、税込価格の扱い、KENP収益がある場合の考え方まで順番に確認していきます。
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ACOSは広告起因売上に対して広告費が何%かを示す指標
目次
ACOSは、広告によって発生した売上に対し、広告費を何%使ったのかを示す指標です。
数字が低いほど、同じ売上を得るために使った広告費が少ないことを意味します。
ただし、ACOSの数字だけで黒字か赤字かは決まりません。最終的には、自分の本のロイヤリティから計算した損益分岐ACOSと比較します。
計算式は「広告費÷広告起因売上×100」
Amazon Ads公式では、ACOSを次の式で求めます。
ACOS=広告費÷広告起因売上×100
広告起因売上とは、広告との接点によって発生したとAmazon Ads上で計測される売上のことです。
たとえば広告費1,000円で広告起因売上が4,000円なら、1,000円÷4,000円×100でACOSは25%になります。
定義の詳細は、Amazon Ads公式のACOSガイドでも確認できます。
ACOS25%は広告売上100円に対して広告費25円という意味
ACOS25%は、広告起因売上100円を得るために広告費を25円使っている状態と読み替えると分かりやすくなります。
| ACOS | 広告起因売上 | 広告費 |
|---|---|---|
| 20% | 100円 | 20円 |
| 25% | 100円 | 25円 |
| 50% | 100円 | 50円 |
この関係だけを見れば、ACOSは低いほど効率的です。
しかし、広告売上100円のうち100円すべてが著者の収益になるわけではありません。Kindle本にはロイヤリティの仕組みがあるため、ACOSの数字と実際に手元へ残る金額は分けて考えます。
ROASは広告費に対する売上の倍率を見る指標
広告効果を見る指標には、ACOSのほかにROASもあります。
ROASは広告起因売上÷広告費で計算し、広告費1に対して何倍の売上が発生したかを見ます。ACOS25%なら広告費1に対して売上4なので、ROASは4です。
同じ内容を割合で見るか倍率で見るかの違いになります。黒字ラインの判断ではACOSを基準にすると、ロイヤリティ率と直接比較できて扱いやすくなります。
ACOSが低くても必ず黒字になるとは限らない
ACOSは低いほど広告効率がよく見えますが、低いという理由だけで黒字とは判断できません。
たとえば損益分岐ACOSが35%の本なら、ACOS30%は購入売上だけで見て黒字側です。ところが損益分岐ACOSがそれより低い本では、同じACOS30%でも赤字側になります。
「ACOSは20%以下なら良い」といった一律の目標値を、条件の違うすべてのKindle本へ当てはめるのは適切ではありません。Amazon Ads公式でも、良いACOSに共通する一つの数字があるとはしていません。
黒字ラインは実際に残るロイヤリティ率から計算する
黒字ラインを考えるときは、広告売上のうち著者へ残る金額と広告費を比較します。その境目になるACOSが損益分岐ACOSです。
| 実際のACOS | 損益分岐ACOSとの関係 | 購入売上だけで見た判断 |
|---|---|---|
| 損益分岐ACOSより低い | 広告費がロイヤリティを下回る | 黒字 |
| 損益分岐ACOSと同じ | 広告費とロイヤリティが同程度 | 損益分岐 |
| 損益分岐ACOSより高い | 広告費がロイヤリティを上回る | 赤字 |
ここで扱うのは、広告経由の通常購入から得られるロイヤリティだけです。Kindle UnlimitedのKENP収益を含めた全体の採算は、記事後半で切り分けて説明します。
損益分岐ACOSはロイヤリティ÷広告起因売上で求める
損益分岐ACOSは、次の考え方で計算します。
損益分岐ACOS=広告起因購入から得られるロイヤリティ÷広告起因売上×100
広告起因売上に対して著者へ35%が残るなら、広告費が35%に達した時点が損益分岐です。ACOSが35%より低ければロイヤリティが広告費を上回り、超えれば広告費の方が大きくなります。
つまり、ACOSの数字そのものではなく、自分の本の損益分岐点より上か下かで判断します。
35%ロイヤリティなら黒字ラインは原則35%
35%ロイヤリティでは、希望小売価格から税金を除いた金額を基礎にロイヤリティを計算します。配信コストは差し引かれません。
Amazon Ads側の広告起因売上も税金を除いた金額で集計されるため、通常購入だけで見た損益分岐ACOSは原則35%になります。
日本の消費税を理由に、35%からさらに税率分を引いて考える必要はありません。ACOSが35%を下回れば購入ロイヤリティが広告費を上回り、超えれば購入だけでは広告費を回収できない計算です。
70%ロイヤリティは配信コスト分だけ黒字ラインが下がる
70%ロイヤリティでは、計算の条件が35%と異なります。KDPでは、税金だけでなく配信コストも差し引いた金額を基礎に70%を計算します。
Amazon.co.jpにおける対象電子書籍の配信コストは、1MBあたり1円で最低1円です。配信コストが発生する本では広告起因売上の70%がそのまま残らないため、購入だけで見た損益分岐ACOSも70%より少し低くなります。
ロイヤリティや配信コストの仕組みそのものは、Kindle出版の料金・印税・配信コストの解説で確認できます。
日本販売で10MB以上なら理論上70%が黒字ラインになる
70%ロイヤリティの配信コストには、日本向けの例外があります。
日本で販売する10MB以上の電子書籍では、配信コストが差し引かれません。
この条件なら税抜きの広告起因売上に対して70%が残るため、購入だけで見た損益分岐ACOSは理論上70%です。10MB未満で配信コストが発生する本では、70%を下回ります。
70%を選択できる価格帯や条件については、Kindle本の価格設定と35%・70%ロイヤリティの違いで確認できます。
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税込550円のKindle本で黒字ラインを計算する
税込550円の本を例に、条件ごとの損益分岐ACOSを計算してみます。消費税を除いた販売価格は500円です。
| 条件 | 広告起因売上 | ロイヤリティ | 損益分岐ACOS |
|---|---|---|---|
| 35%ロイヤリティ | 500円 | 175円 | 35% |
| 70%・5MB | 500円 | 346.5円(丸め前) | 約69.3% |
| 70%・10MB以上 | 500円 | 350円 | 70% |
同じ価格の本でも、ロイヤリティ条件と配信コストによって黒字ラインが変わります。
35%ロイヤリティの場合は35%
税抜500円に35%を掛けると、ロイヤリティは175円です。損益分岐ACOSは175円÷500円×100で35%になります。
ACOS30%なら広告起因売上500円に対する広告費は150円で、ロイヤリティ175円が上回るため購入だけでも黒字側です。ACOS40%なら広告費は200円となり、ロイヤリティ175円を超えるので赤字側になります。
70%・ファイルサイズ5MBの場合は約69.3%
同じ税込550円でも、70%ロイヤリティでファイルサイズが5MBなら配信コストを反映します。
税抜500円から配信コスト5円を引くと495円で、495円×70%=346.5円が丸め前のロイヤリティです。損益分岐ACOSは346.5円÷500円×100で約69.3%になります。
「70%ロイヤリティだからACOS70%まで黒字」と考えると、配信コストの分を見落とします。ファイルサイズによって金額が変わるため、70%の本は自分の条件で計算してください。
70%・10MB以上の場合は理論上70%
日本販売で10MB以上なら配信コストが差し引かれないため、税抜500円の70%である350円がロイヤリティ計算上の金額です。
350円÷500円×100で、損益分岐ACOSは理論上70%になります。
自分のロイヤリティ条件を確認し、残る金額を広告起因売上で割れば、価格が違う本でも同じ手順で黒字ラインを求められます。
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広告起因売上とKDPのロイヤリティを同じ金額として扱わない
黒字ラインを計算するときは、Amazon Adsに表示される売上と、KDPで受け取るロイヤリティを区別します。
広告起因売上は、その金額がそのまま著者の収益になるわけではありません。広告側の画面では売上と広告費の関係を確認し、実際の利益はKDP側のロイヤリティ条件を反映して判断します。
広告起因売上は消費税を除いた金額で集計される
日本では電子書籍の価格が税込で表示されるため、ACOSでも税込価格が使われると考えてしまいがちです。
しかしAmazon Adsでは、広告起因売上から税金を除いた金額が集計されます。税込550円の本なら、基準になるのは税抜500円です。
KDPのロイヤリティも希望小売価格から税金を除いた金額を基礎に計算するため、両方の基準がそろいます。
広告売上の計上方法は、Amazon Ads公式の広告キャンペーンのアトリビューションでも確認できます。
35%を31.8%、70%を63.6%へ補正する必要はない
税込価格をそのまま広告売上だと考えると、消費税分を引くために35%を約31.8%、70%を約63.6%へ補正したくなるかもしれません。
ただし、広告起因売上もKDPのロイヤリティ計算も、どちらも税金を除いた金額が基準です。消費税分をもう一度ACOSから差し引くと、二重に引くことになります。
35%ロイヤリティなら通常購入だけの損益分岐ACOSは原則35%、70%なら消費税ではなく配信コストの有無を反映して計算します。
Amazon AdsとKDPレポートの数字は一致しないことがある
Amazon Adsの売上とKDPレポートの数字を照合しても、そろわない場合があります。
広告とKDPでは、数字を集計する目的や帰属の方法が同じではないためです。広告との接点があった日への帰属、注文のキャンセル、価格の違い、別ASINへの帰属なども差の原因になります。
数字に差があるだけで、ACOSの計算が間違っているとは限りません。ACOSの確認はAmazon Ads上の指標で行い、実際の収益はKDP側のロイヤリティで確認すると整理しやすくなります。
KENP収益がある本は購入とKENPを分けて判断する
Kindle Unlimited対象の本では、通常購入とは別にKENPによるロイヤリティが発生します。
この場合も、ACOSで見る購入売上の採算と、KENPを含めた広告全体の収益を分けて確認すると判断しやすくなります。KENP収益があるからといって、ACOSの計算式そのものを変えるわけではありません。
まず通常購入だけの損益分岐ACOSを確認する
最初に、購入だけの損益分岐ACOSを計算します。35%なら原則35%、70%なら配信コストの条件を反映した数字と、実際のACOSを比較します。
ここで見ているのは、広告経由の通常購入だけで広告費を回収できているかという一点です。最初からKENPを混ぜると、何によって黒字になっているのか分からなくなります。
KENPロイヤリティをACOSの計算式へ足さない
ACOSは、広告費を広告起因売上で割って求めるAmazon Adsの指標です。KENPロイヤリティを足して独自のACOSへ作り替えると、公式の指標と比較できなくなります。
ACOSはACOSとして確認し、KENPは広告全体の採算を判断する別の収益として扱います。
環境によっては、Amazon AdsにKENP ReadやKENP Royaltiesなどの推定指標が表示されます。推定ロイヤリティは後から実際の金額と差が出る可能性があるため、確定額と同じものとしては扱わないでください。
購入で赤字でもKENPを含めると黒字になる場合がある
通常購入だけを見ると、実際のACOSが損益分岐ACOSを超えることがあります。購入ロイヤリティだけを基準にすれば赤字の状態です。
ここに広告をきっかけとしたKENPロイヤリティが加われば、広告全体では広告費を上回る収益になる場合があります。反対に、KENPを加えても広告費を回収できなければ全体でも赤字です。
ACOSが損益分岐点を超えたという理由だけで即座に停止と決めず、購入とKENPを分けたうえで最終的な収支を確認してください。
KENPの単価やレポートの見方は、KENPの単価と計算方法・レポートの見方で確認できます。
ACOSから広告の継続を判断する手順
ここまでの内容を、実際の確認順にまとめます。
| 確認順 | 確認する内容 |
|---|---|
| 1 | ロイヤリティ率と配信コストの条件から損益分岐ACOSを計算する |
| 2 | Amazon Ads上の実際のACOSと損益分岐ACOSを比較する |
| 3 | 黒字ラインを超えていれば、広告費と広告起因売上を分けて見直す |
| 4 | 購入ロイヤリティとKENPを合わせて広告全体の収支を確認する |
実際のACOSが損益分岐ACOSより低ければ通常購入だけで黒字側、同じなら損益分岐、高ければ赤字側という見方になります。
黒字ラインを超えている場合は広告費と売上を分けて見直す
ACOSは広告費÷広告起因売上で決まるため、数字が悪化したときは、広告費が増えているのか売上が伸びていないのかを切り分けます。
広告費が膨らんでいる場合は、入札条件を見直す余地があります。ただし、CPCをいくらに設定するかという具体的な調整は本記事の範囲外です。
入札額の考え方は、Kindle広告の入札額(CPC)の決め方で確認できます。
ACOSは購入売上の効率を見るための基準として使い、広告を続けるかどうかの最終判断は、実際に残る収益全体で行ってください。「ACOS○%なら成功」と固定するのではなく、自分の本の損益分岐点を計算することが出発点になります。
【著者:石黒秀樹】
Kindle出版サポート歴5年。
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