KDPのペーパーバックとは?出版方法・費用・電子書籍との違いを徹底解説
のべ600名以上・累計10,000冊以上の出版を支援してきた石黒秀樹が解説します。
KDPのペーパーバックは、Amazonで販売できる紙の本です。注文が入ってから印刷・製本されるため、出版前に在庫を用意しておく必要はありません。
ただし、「無料で紙の本を出せる」という説明だけでは費用の全体像はつかめません。出版を始めるときに印刷代の先払いは不要でも、本が売れたときにはロイヤリティから印刷コストが差し引かれ、自分で校正刷りを注文する場合には印刷代と配送費が発生します。
この記事では、ペーパーバックの仕組み、出版手順、費用が発生する3つのタイミング、電子書籍との違いを順番に整理します。
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KDPのペーパーバックとは注文後に印刷される紙の本
目次
KDPのペーパーバックは、読者からの注文が入ってから印刷するオンデマンド方式の紙書籍です。著者が先に大量印刷して在庫を保管する仕組みではありません。
在庫を先に抱えずに紙の本を販売できる
注文された分だけKDP側で印刷・製本されるため、一般的な紙の自費出版のように数十冊から数百冊をまとめて刷る工程がありません。
売れる冊数を予測して在庫を仕入れる必要がない点が、KDPで紙の本を出すときの大きな特徴です。保管場所を確保したり、売れ残りを抱えたりする前提でもありません。
「紙の本を出すなら先に大量印刷が必要」という前提で費用を見積もっている場合は、ここを最初に切り替えておくと判断しやすくなります。
電子書籍のデータをそのまま流用することはできない
ペーパーバックは、Kindle電子書籍を自動的に紙へ変換したものではありません。紙として印刷するために、本文と表紙を印刷用に作り直す工程が加わります。
具体的には、次のような項目を自分で決めます。
- 本の判型(紙のサイズ)
- インクの種類と用紙の種類
- 裁ち落とし(ページ端まで色や画像を入れるかどうか)の有無
- 判型と余白に合わせた本文データ
- 前表紙・背表紙・裏表紙をつなげた1枚の表紙データ
電子書籍の表紙は前面の1枚だけですが、紙版では背表紙と裏表紙まで含めて作成します。本文も、判型や余白といった印刷条件に合わせて仕上げます。
そのため、電子書籍版がすでに完成していても、紙版としての確認作業は別に発生すると考えておきましょう。
ペーパーバックの出版方法は紙の仕様を決めてから登録する
出版の流れは、基本情報を入力し、紙の仕様を決め、本文と表紙を登録し、プレビューを確認して価格を設定する順です。電子書籍の手順に「紙の仕様を決める工程」が加わると考えると全体像をつかみやすくなります。
手順1:KDPアカウントと本の基本情報を用意する
最初に、出版に使うKDPアカウントと、タイトルや著者名などの基本情報を整理します。
KDPを初めて使う場合は、先にアカウント設定と支払い情報の登録を済ませておくと、そのあとの作業が止まりません。登録段階から確認したい方は、KDP登録方法と始め方の手順を先にご覧ください。
手順2:判型・インク・用紙・裁ち落としを決める
次に、どのような紙の本として印刷するかを設定します。判型、インク、用紙、裁ち落としの有無が主な項目です。
これらの条件によって、必要な本文サイズや表紙データの寸法が変わります。仕様を先に決めてから本文と表紙を仕上げると、作り直しを避けられます。
判型には複数の選択肢があり、ページ数や本の内容によって向き不向きが分かれます。サイズごとの比較は、KDPペーパーバックの判型とおすすめサイズの選び方で確認できます。
手順3:本文と表紙をアップロードして印刷プレビューを確認する
紙向けのデータが完成したら、KDPへアップロードします。アップロード後は、印刷プレビューで仕上がりの状態を確認します。
プレビューでは、文字や画像の位置に加えて、ページ全体が判型の中に収まっているか、余白が極端に狭くなっていないかを見ます。電子書籍では問題のないデータでも、紙版では判型や余白との関係で調整が必要になる場合があります。
アップロードが完了した時点を完成とせず、印刷プレビューを最後まで確認してから次へ進みましょう。
手順4:販売権と価格を設定して出版を申請する
本文と表紙の確認が終わったら、販売権と価格を設定して出版手続きに進みます。
ここで気をつけたいのは、電子書籍と同じ感覚で価格を決めないことです。ペーパーバックには1冊ごとの印刷コストがあるため、販売価格からそのコストを引いた金額が手取りの目安になります。価格を入力する前に、適用されるロイヤリティ率と印刷コストの両方を確認しておきましょう。
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ペーパーバックの費用は3つのタイミングに分けて考える
ペーパーバックの費用は「無料」か「有料」かの二択ではありません。いつ発生する費用なのかを分けて整理すると、実際の手取りを見積もれるようになります。
| タイミング | 費用の考え方 |
|---|---|
| 出版を始めるとき | 大量印刷代や在庫購入費の先払いは不要 |
| 本が売れたとき | ロイヤリティから1冊ごとの印刷コストが差し引かれる |
| 自分で本を注文するとき | 校正刷りや著者用コピーの印刷代と配送費が発生する |
出版開始時:印刷代の先払いは発生しない
KDPのペーパーバックは、販売開始前に本をまとめて印刷する仕組みではありません。そのため、出版時点で印刷費を先払いしたり、在庫を買い取ったりする必要はありません。
ただし、無料になるのはKDPでの出版手続きに関する部分です。原稿の執筆を外注したり、表紙デザインを依頼したりする場合の制作費は、これとは別に発生します。
販売時:ロイヤリティから1冊ごとの印刷コストが引かれる
ペーパーバックが売れても、販売価格がそのまま収入になるわけではありません。適用されるロイヤリティ率で計算した金額から、1冊分の印刷コストが差し引かれます。
印刷コストは、ページ数、判型、インクの種類などによって変わります。ページ数が多い本や、カラーインクを使う本ほど高くなる傾向があります。
販売価格だけを見て手取りを判断しないようにしましょう。計算式や具体的なシミュレーションは、KDPペーパーバックの印刷コストと利益計算で確認できます。
Amazon.co.jpのロイヤリティ率は価格によって50%と60%に分かれる
KDP公式情報では、Amazon.co.jpのペーパーバックのロイヤリティ率は希望小売価格によって変わります。999円以下は50%、1,000円以上は60%という区分です。
| Amazon.co.jpの希望小売価格 | ロイヤリティ率 |
|---|---|
| 999円以下 | 50% |
| 1,000円以上 | 60% |
ここからさらに印刷コストが差し引かれるため、「ペーパーバックは一律60%」という理解のままでは、低価格帯で見積もりがずれます。
なお、Amazon.co.jpでは紙書籍の希望小売価格を税抜きで設定し、読者が支払う金額には消費税が加算されます。ロイヤリティ率の適用条件や計算の詳細は、KDPペーパーバックの50%・60%ロイヤリティの仕組みをご覧ください。なお、料率や条件は変更される場合があるため、価格を決める前にKDPの管理画面で最新の表示を見ておくと確実です。
校正刷りと著者用コピーには印刷代と配送費がかかる
出版前に実物の仕上がりを見たい場合は校正刷りを、出版後に手元へ本を用意したい場合は著者用コピーを注文できます。
どちらも出版登録とは別の注文で、1冊ごとの印刷代と配送費が必要です。無料配送やPrime配送の対象にもなりません。
紙の色味や余白は画面上のプレビューだけでは判断しにくいため、初めて紙版を出す場合は校正刷りの費用も見込んでおくと安心して進められます。
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ペーパーバックと電子書籍は制作・収益・利用できる機能が異なる
KDPでは紙版と電子版の両方を出版できますが、違いは「紙かデジタルか」だけではありません。必要なデータ、収益の計算方法、ISBNや販売機能にも差があります。
| 比較項目 | ペーパーバック | 電子書籍 |
|---|---|---|
| 制作 | 判型や印刷条件を決め、紙向けの本文と表紙を作る | 紙固有の判型や印刷設定は使わない |
| 販売時のコスト | 1冊ごとの印刷コストが差し引かれる | 印刷コストの差し引きはない |
| ロイヤリティ | Amazon.co.jpでは価格により50%または60% | 異なる区分と条件で計算される |
| ISBN | ISBNを設定し、条件を満たせば無料ISBNも使える | KDPのISBN専用ヘルプでは不要と案内されている |
| KDPセレクト・Kindle Unlimited | 紙版は対象外 | Kindle本として利用できる |
| 予約注文 | 利用できない | 利用できる |
制作面:紙版は判型と背表紙まで含めたデータが必要
ペーパーバックでは、先に判型と印刷条件を決め、その仕様に合わせて本文のレイアウトを組みます。ノンブル(ページ番号)や余白など、紙のページとしての調整が加わります。
表紙も、前表紙・背表紙・裏表紙をつなげた1枚のデータが必要です。背表紙の幅はページ数と用紙によって変わるため、本文が確定してから表紙を仕上げる順序になります。
収益面:紙版は印刷コストを含めて価格を決める
電子書籍は印刷コストを差し引かれませんが、ペーパーバックは1冊ごとにコストが発生します。紙版では印刷コストを含めたうえで販売価格と収益を設計する必要があります。
ページ数が多い本を安く売ると、印刷コストが上限に近づいて手取りがほとんど残らないこともあります。電子書籍で設定している価格をそのまま紙版に当てはめず、それぞれの収益構造で計算しましょう。
機能面:ISBN・KDPセレクト・予約注文の扱いが違う
ペーパーバックではISBNを設定し、条件を満たす場合はKDPが提供する無料ISBNも選べます。一方、KDPのISBN専用ヘルプでは、Kindle電子書籍にISBNは必要ないと案内されています。無料ISBNと自前のISBNのどちらを選ぶかは、KDPの無料ISBN・自前ISBN・不要なケースで比較できます。
KDPセレクトとKindle Unlimitedは、Kindle本を対象とした仕組みです。ペーパーバックを出しただけでは、紙版が既読ページ数による収益の対象にはなりません。
予約注文も、KDP公式では電子書籍向けの機能として案内されています。紙版を追加しても、電子書籍が担っている役割まで置き換わるわけではありません。
紙で届けたいならペーパーバックを追加し電子書籍と併用する
ペーパーバックと電子書籍は、どちらか一方を選ぶ関係ではありません。読者への届け方と、使いたいKDPの機能で判断すると整理しやすくなります。
ペーパーバックが向いているケース
紙で読みたい読者にも届けたい場合や、実物の本を手元に置きたい場合は、紙版を追加する価値があります。イベントで見本を配りたい、著者として現物を確認したいといった目的にも合います。
一方で、判型の決定、本文レイアウトの調整、背表紙を含む表紙制作といった工程が増えます。紙で届ける必要性と、そこにかける手間を見比べて決めましょう。
電子書籍を残しておきたいケース
Kindle Unlimitedで読まれることを狙う場合は、Kindle本としての電子書籍が必要です。予約注文を使って発売日に向けて注文を集めたい場合も同様です。
これらを活用したいなら、紙版を追加しつつ電子書籍も並行して販売する形が適しています。
同じ作品を電子書籍と紙版の両方で出版できる
KDPでは、同じ作品を電子書籍とペーパーバックの両方で出版できます。電子書籍を先に出し、あとから紙版を追加する進め方も可能です。
条件を満たした各形式は、Amazonの商品詳細ページ上で関連付けられます。ただし、出版すれば必ず自動で1つのページにまとまるとは限りません。タイトルや著者名などのメタデータが一致していること、同じKDPアカウントから出版されていることなどが関係します。
紙で届けたい目的があるならペーパーバックを追加し、Kindle Unlimitedのように電子書籍だけが持つ役割も必要なら、両方を並行して活用する形で考えてみてください。
【著者:石黒秀樹】
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